今話題のフロー電池とは?注目されている理由を徹底解説!

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皆さんおはようございます、八重さくらです!
今日は2020年5月現在、何かと巷を賑わせているフロー電池について徹底解説します!

 

電池といえばEV(電気自動車)はもちろん、スマホやタブレット、ノートPCなど我々の生活には欠かせないモノの重要な部品であり、その性能は日々進化を続けている。

数ある電池の種類のなかでも特に「リチウムイオン電池」は小型で多くの電気を蓄えられる(=高密度)とされ、上記の殆どの製品を始めとして広く普及し、2019年12月には発明された吉野彰博士ノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しい。

しかしそんな優秀な「リチウムイオン電池」も万能ではなく、より多くの用途に対応すべく新たに多様な電池の開発が盛んに進んでいて、今話題となっている「フロー電池」もその内の一つである。

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一口に電池と言っても、色んな種類があるんですね~!

 

発表内容

各メディアが取り上げているプレスリリースの主な内容は以下の通り。

 

米ミネソタ州で2番目に大きい電力会社である「グレートリバーエナジー」は、段階的に石炭火力を廃止すると同時にform enegry社のフロー電池を設置し、2023年に稼働を開始する。

 

これだけでは「2023年にフロー電池という新しい蓄電池ができる」ことしか読み取れないが、なぜここまで注目されているのか、一歩ずつ詳細を紐解いていみよう。

 

1MW/150MWh

一見すると呪文の様な文章だが、これは今回のフロー電池が注目されている理由を一言で表したものだ。

「1MW」(=1,000,000W)は電池の最高出力を表していて、例えば「消費電力100Wの電球を10,000個同時に使える」という意味である。

そして「150MWh」は上記の最高出力を150時間連続で使用可能であることを表していて、既存のリチウムイオン電池による大規模な蓄電池の場合はせいぜい2~4時間程度なので、こちらの方が注目されている最大の理由でもある。

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確かに150時間は長いけど、単純に電池の数を増やして大きくしただけじゃないの?

 

確かにそれは半分正解だが、ここで「コスト」の問題が発生する。

例えば現在主流となっているリチウムイオン電池のコストは年々低下してきているものの、2020年でも132ドル/kWhであり、もし150MWh分のリチウムイオン電池を用意するとしたら19,800ドル(約21億円)かかる計算となる。

 

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リチウムイオン電池の価格推移(日経XTECHより引用)

 

例えばテスラが2018年にオーストラリアで100MWhの大規模な蓄電池を導入し、翌2019年には150MWhに増強しているが、これには(当然回収できる前提ではあるものの)相当なコストがかかっていると予想できる。

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高いのはわかったけど、実際その気になれば用意出来るわけで・・・。
でも、そもそも何故そんなに大きなバッテリーが必要なんでしょうか?

 

再生可能エネルギーと蓄電池

ここで先ほどのプレスリリースを見直すと「石炭火力を廃止する代わりに、同等の風力発電を新設する」とされていてるが、近年急速に普及している再生可能エネルギーが大きく関係している。

風力発電や太陽光発電は二酸化炭素などの温室効果ガスを抑えられるため環境対策には必須の発電方法であり、従来は火力発電や原発よりもコストが高かったものの、近年ではそれらの発電方法と比べても大幅に安いコストで発電できるようになった。

このように再生可能エネルギーは環境に負担をかけずに低コストでエネルギーを得ることが可能だが、現在は出力が安定しないことが1番の課題とされている。

例えば風力発電は常に風が吹き続けるとは限らず、太陽光発電は曇りや雨の日は発電量が減少し、夜には全く発電できない。加えて近年多発する異常気象を鑑みれば、数日程度発電が不安定となる状況が発生することは想像に難くない。

そこで必要になるものが大規模な蓄電池であり、現在はリチウムイオン電池による蓄電池の設置が進んでいるものの、将来的にはより安価で大容量な蓄電池が望まれている。

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安価で大容量な蓄電が必要であることはわかりました。
どうしてフロー電池だとそれが可能になるのでしょうか?

 

安価で大容量を実現する方法

まずは何故リチウムイオン電池は大幅なコスト低減が難しいのかを考えてみよう。

現在実用化されているリチウムイオン電池は材料として鉄・ニッケル・マンガン・コバルトを始めとした色々な希少鉱物(レアアース)が使われていて、日々使用量を減らす研究が進められているものの、容量を2倍にすると希少鉱物の使用量も2倍になる。

一方、フロー電池の場合は電気を貯めるための2種類の「電解液」と呼ばれる液体をタンクで保管するため、タンクの容量を増やすことで容易に電池の容量を増すことができる

 

フロー電池
フロー電池の仕組み(LEシステムHPより引用)

 

当然ながら中身の「電解液」も安価でなければ意味が無いが、今回form energy社は水と硫黄を使うことでかつて無い低コストを実現するという。

水は当然ながら、硫黄も工業製品の副産物として大量に生産されているため、仮に水と硫黄で実現できるとしたら非常に安価に容量を増やすことが可能になるのだ。

なお、本記事執筆(2020年5月)時点ではまだ具体的なコストは発表されていないが、以前テスラで働きform energyを設立したMateo Jaramillo氏曰く「現在、リチウムイオンバッテリーを使用した電気自動車のバッテリーパックは、約200ドル/kWhかかります。将来的には100ドル/kWh以下に落ちると予想されますが、リチウムイオンバッテリーでは10ドル/kWhまたは20ドル/kWh以下まで下げるのは難しいでしょう」としており、リチウムイオン電池と比べて大幅に安くなることが予想できる。

 

使い所に注意

以上のようにコストメリットが期待されているフロー電池だが、決して万能というわけではない。

フロー電池はタンクの容量=電池の容量であり、いくらタンクを増やしても最大出力(同時に使える電気の量)を増やすことはできないほか、使用電力量の急激な増減への応答性能は未だ不明である。

これについては例えば瞬時に最大出力を発揮できるリチウムイオン電池の蓄電池や現在も需要調整に使われている揚水発電を併用する必要があるだろう。

例えば少し古い電力の考え方として「ベースロード電源」という考え方があり、需要に対して供給能力の調整範囲が乏しい電源は24時間同じ出力を維持し、調整しやすい「ミドル電源」や「ピーク電源」を用いて調整する考え方がある。

 

ベースロード電源
電源種別(エコニュースウェブマガジンより引用)

 

これに擬えて言うならば、

  • フロー電池:ベースロード電源
  • リチウムイオン電池:ミドル・ピーク電源

という言い方が出来るだろう。

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最後までお読み頂きありがとうございました!
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